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誰よりも暴力的な女はすでに元の寝転がった体勢に戻っている。
透がその姿に呆れていると、グシグシと泣いていた少年が涙を拭って、誰に促されたわけでもなく、
「ごめんなさい」
謝ってきた。
「えっ・・とぉ、俺は大丈夫だから、・・いいよ」
透は実際蹴られたわけでもないし、引っ越しをよくするため、あの程度の言葉なら言われ慣れている。
だから、謝られなくてもどうでもいいのだが、この少年がホウキに対して言いたいことがないのか、それが不思議でならなかった。
他の小学生たちは、彼が謝ったことに『よくやった』というような、彼を称える雰囲気でまた仲間たちの輪に彼を迎え入れた。
そして、透を半ば強引にアフグの隣の席に座らせて、
「それじゃあ、皆で透君に鈴森神社のことを教えてあげよう!」
アフグが声をかけると、きゃっきゃ、きゃっきゃと騒ぎ始める。
さっきまで泣いていた少年ですら、もう元気にはしゃいでいて、やっぱり今日は帰るべきだったと、透は後悔した。
「この神社に祀られているのは誰かな?」
『鈴音さまー!』
アフグの問いかけに、小学生たちは一斉に答えた。その後、
「鈴音さまだよね!」
「こんなの常識だよ!」
と、口々にしゃべりだす。
「鈴音様?」
「ずっと昔の陰陽師の名前だよ。ここで祀られているのはこの地で功績を残した人神なんだ」
透のつぶやきにアフグが補足説明してくれ、次に、
「じゃあ、鈴音はどんな人だったっけ?」
「怖くて、強くて・・・」
「うんうん、それで?」
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