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「昔、この森は暗く冷たく、妖怪や怨霊のような妖(あやかし)の類が集まってきていたんだ。それらを鈴音は、まさに鈴の音で退治していった」
「鈴音っていうのは本名じゃないのか?」
「あいつは昔の名は捨てたと言っていたから、あいつの鈴の音で妖を制する能力から誰かが、もしくは自分でつけたんじゃないかな」
そんなアフグの返しに、透はちょっとずつ違和感を覚え始めて黙る。
透が黙ったことでアフグは話を続けた。
「当時のこの森は本当に酷かった。放置されたせいでうっそうと生えた木々によって日の光は届かず、今よりももっと寒く湿っていて、知らずに迷い込んだ者や、自ら迷い込んだ者の亡骸がそこかしこに転がっていた」
そこでアフグは嘲笑した。
でもその笑みに嫌みはなく、どちらかと言えば優しい愛情がこもっているように見える。
「そんな酷い土地なのに、あいつは定住することを決め、妖も亡骸も一掃し、森を整えて住める土地へと変えた」
「一人でか?」
透がつい言葉を挟むと、アフグは待ってましたとばかりのどや顔を透と小学生たちに見せ、
「良い質問だ。
お前たち、一人ぼっちのわがまま鈴音にひどい目にあいながらも一緒にいてあげたのは誰だったかな?」
『アフグとホウキ!』
口々に騒いでいた小学生たちはアフグの問いかけに、やはり声をそろえて答えた。
そこで透は先ほどから気になっていた違和感の正体を知る。
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