鈴音様とスズ森と…

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「おや?信じてないね?」  透の冷ややかな目にアフグは楽しそうにくすくす笑って、今までホウキに向けていた扇子を透に向ける。  そして軽くそよりと扇子を振った。  ちりん  扇子に付けられていた鈴が揺れて鳴り、冷やりとした風が生み出される。  冷凍庫を開けた時に流れ出てくる冷気と同じか、それ以上の異常な冷気。  夏のうだるような暑さには、この冷気はとても心地よいだろう。  しかし、これまた異常な涼しさを持つ鈴森神社では寒すぎた。 「これはね『蝙蝠扇』といって、夏の冷涼のために作られた扇子なんだ」  アフグは閉じた蝙蝠扇を器用にくるくると回しながら、寒さで震えた透にほほ笑んだ。  鈴がちりんちりんと淋しげに鳴り響く中、 「アフグ、暑い。こっちを扇げ」 「はいはい。まったくホウキは暑がりで困る」  ホウキの横柄な声が聞こえ、アフグは言葉とは裏腹に嬉しそうな表情で、またパタパタとホウキを扇ぎ始める。  やはり普通じゃないのだ。  あの蝙蝠扇も黒竹箒も、そして彼らも。  初めは、彼らのことをそれらを制御し扱うものだと思った。  そうであるならば『ホウキ』と『アフグ』という名も代ごとに継承されていく名として理解できる。   だけど透は彼らの雰囲気からその考えが間違っていることを察する。  ちこにまた中二病扱いされるのは気に食わないが、透は思ってしまったのだ。  彼らはそれらを扱う者ではなく、そのモノ自身なのだ、と。 「・・お前ら人間じゃないのか?」 「おっ!一昨日越してきたばかりにしては呑み込みが速いな」
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