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透が不満そうにホウキと、ついでにホウキの隣に腰をおろしているアフグをにらみつけると、
「アフグはオレを扇ぐという使命があんだよ」
『ごめんねぇ~』という表情でアフグがホウキをパタパタと扇ぐ。
「別に、透君も待ってていいよ」
「いいよ。あそこにいると、また理不尽にはたかれるし」
透はちこと二人で、ちこの父親がスイカを切り分けているという台所へ向かう。
ホウキの傍若無人ぶりには怒りを超えて、呆れてくる。
でも、一番呆れてしまうのは、そんな彼女のふとした態度や表情に惹きこまれてしまう自分だったりもした。
「いいのよぉ、別に。鈴森神社にはお世話になってるからね」
廊下の向こうからおばさんの声が聞こえてきた。
「木田のおばちゃんは声が大きいんだから」
ちこがクスクスと笑みを漏らして、台所と廊下の仕切りを開けようとした時、
「ところで、変な噂を聞いたんだけど・・」
ちこの手が止まる。透も耳をそばだてた。
「噂ですか?」
おじさんの声が聞こえる。これがちこの父親の声だろう。
「そうよぉ。何でも鈴森神社は御利益もない鈴をお守りとして売っていて、詐欺を行ってるって言うのよ。まったく誰がそんなこと言いだしたのかしらね」
木田のおばさんは怒り口調だ。
確かにお守りとして売っていたあの鈴たちは、御利益が曖昧かついろいろあって、胡散臭いと透も思った。
でもそれを詐欺と表すとはずいぶん突飛な話である。
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