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「何笑ってるのよ、拓郎君は悔しくないの?」
また木田のおばさんの声。
拓郎と言うのはたぶんちこの父親のことだろう。ちこの父親は今の噂話を聞いて笑っているらしい。
「そう言われましてもねぇ、実際御利益があるかどうかわからない品をお守りとして売っているのは事実なものですから」
拓郎はあのお守りの胡散臭さを認めた。
その潔さに透は笑ってしまいそうになる。
「第一、この神社で祀っているのは人神ですよ。本物の神でない上に鈴音様だ」
「そうよねぇ。怖くて、わがままで、おっちょこちょいの鈴音様だものねぇ」
これもアフグの教育の成果なのだろうか。
鈴音様の事で笑い声を上げる拓郎と木田のおばさん。
透はアフグの教育の完璧さに恐怖する。
「過度な期待されても困るわよねぇ」
「はい。それにお守りは気休めです。本当に何かを得たいのであれば自分で動きださなければ始まりません」
「あら、良いこと言うようになったわね」
「それほどでも」
拓郎と木田のおばさんはまた笑い声を上げる。
透も拓郎と木田のおばさんには同感だった。
たかがお守りに過度な期待しすぎるから、詐欺とか馬鹿馬鹿しい考えになるのだ。
神頼み過ぎるというか、他力本願にもほどがある。
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