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拓郎はいつものニコニコ顔を変えずに、神妙な面持ちの娘を見つめた。
「ちこはさっきの話を聞いていたんだね」
ちこは申し訳なさそうにこくりとうなずいてから、
「大丈夫なの?詐欺なんて言われて・・」
「もちろん」
「すぐにそんな噂なくなるよね」
「それはどうかな」
拓郎の言葉にちこは表情を曇らせる。
調子のいいことを言うのは簡単だけど、それではきちんと向き合えない。
動かなければいけない時に対処が遅れてしまう。
だから拓郎は自分が考えていることの全てをありのままに、ちこに伝えることにする。
「たぶん、無理やりにでも裁判沙汰にしてくるだろう。勝てるとは思っていないが、勝てたらラッキーぐらいには考えているはずだ。彼らの目的は鈴森神社のイメージダウンだろうからね」
「やっぱり、昨日の人たちの仕業なの?」
「たぶんね。昨日今日でこんな噂を流してくるとは、さすが佳奈美ちゃん。仕事が早くて素敵だ」
「バカ」
ちこはムスッとした表情で、非難がましく拓郎をにらんだ。
その瞳の奥に不安の色を見つけて、拓郎は娘の頭をなでた。
「ちこはこの鈴森が好きか?」
「もちろんだよ。でも・・」
「ちこはこの土地からあまり離れたことがないから気付かないだろうけどね、この鈴森はきちんと鈴音様やアフグさん、ホウキさんが守ってくれているんだよ」
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