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朝だと思って目を覚ますと、もう朝ではなく昼時だった。
透は寝すぎてだるい体を引きずりながら冷蔵庫前まで行く。
冷蔵庫の扉には磁石で留められた兄からのメモ書きとお金がある。
それに気付いたが無視して、冷蔵庫の中の二リットルペットボトルを取り出して、そのまま口をつけて飲んだ。
そして、そのペットボトルをもとの位置に戻して、初めてメモ書きを読んだ。
そこにはただ簡素に、朝食が冷蔵庫内に用意してあることと、昼食を一緒に留めてあるこの金で適当に買って食べるよう書いてあるだけだった。
もう一度冷蔵庫を開けると、そこには確かに千切りキャベツにトマト、ポテトサラダと目玉焼きが盛られた皿がラップにくるまれて置かれている。
透はとりあえず、トマトと目玉焼きをその場に立ったまま手づかみで口に放り込んだ。
咀嚼しながら、残りを見つめる。
ポテトサラダと千切りキャベツ。
どっかのスーパーの既製品だろう。
朝食の用意と言ったって、兄がやったことと言えばトマト切って、卵焼いて、皿に盛り付けただけ。
そんなこと透にだってできる。
いつまでも子供扱いなところや、他にも何だかいろいろとむしゃくしゃしてきて、透は残りをそのままゴミ箱に落とした。
空になった皿はきれいに洗って片付ける。
そう、透にだって、兄ができるくらいの家事はもうできるのだ。
あの頃の、父が死んで二人きりになってしまったころの小さい透はもういないのに、兄は仕事の都合で透を連れまわし、連れまわしているくせに、適当に生活できる環境だけ用意して放置する。
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