それぞれの能力

6/12

42人が本棚に入れています
本棚に追加
/124ページ
「蝙蝠扇は頭や心も冷やすからね。これで扇がれた直後にあんな風に熱く怒鳴れないんだよ」  アフグは得意気にパタパタと蝙蝠扇を動かし、冷んやりとした気持ちいい風が透の肌をなでる。 「ただ、俺は冷静にさせるだけで、喧嘩後のわだかまりや喧嘩の理由になった怒りをなくすことはできないんだけどね」 「思ってたより、その扇子ってすごいんだな」  透が正直に感想を述べると、アフグは扇子をしまいながらくすくす笑って、 「本当にすごいのは黒竹箒さ。黒竹箒はそういうわだかまりや邪心、憎しみや悲しみなどの負の感情というような心の汚れを掃き祓ってきれいにできる」  その言葉に透は腕組みしてつぶやく。 「ホウキがそんなことできるようには思えないなぁ」 「だけど、透君はそんなホウキに惹かれたんじゃないの?」 ゲホッ 「な、何でそういう話になんだよ!」 「えー、だって好きなんでしょ?」  透はむせた。 「そ、そういうお前はどうなんだよ」 「ん~、どうなんだろうね」  アフグははっきりと答えてくれなくて、透はしばらく蝉の鳴き声を聞いてから、 「お前らってどんな関係なんだよ」 「腐れ縁って奴だよ。鈴音に力ずくで押さえつけられて飼い馴らされた者同士、仲良くしてますってところ」  アフグはまたクスクス笑う。 「あの頃の俺たちはワルだったからさ、俺なんて鈴音の鈴でぐるぐる巻きに縛られて身動き取れねぇの。他の妖と一緒に殺されてもおかしくなかったのにね、鈴音の奴は俺たちを飼い馴らした」  そして、耳から下がる鈴をいじってちりちり音を響かせる。
/124ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加