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それに何より、洗脳かと思うくらい無価値な神社に入れ込む彼らを解放してやりたい。
そのためには、鈴森神社が無価値であることを証明しなくてはならないのだが。
悟は部屋を見回し、怪我した二人の男に眼を向けて、自分の指先に貼られた絆創膏を擦る。
下水溝と石段による何とも気の毒な話に、弟が思い出された。
「もしかして、お前ら弟にぶつからなかったか?」
『あー!』
悟がそう声をかけると、二人は同時に声を上げ、悔しそうに頭を抱えた。
「そうだ!あいつお前の弟じゃん!」
「あ~、油断した」
「・・・・・」
悟はそんなことをわめく二人に対して何も言わずに黙った。
だが、絆創膏を擦る指に、無意識に力がこもる。
やはり、神やら神社などはあてにならない。
この町でも弟の体質は健在できちんと働き始めている。
それが、神社というものが何の意味もなさないということを証明する。
それで町の人間たちも神社がいかに不要なものかわかるはずだ。
あと邪魔なのは、
「篠原、黒竹箒と蝙蝠扇についての調べは順調か?」
「はい。いろいろな逸話があるようですが、どうも蝙蝠扇はともかく黒竹箒はかなり危ないもののようです」
本当か嘘か、鈴森神社の黒竹箒と蝙蝠扇には奇妙な力が宿っているらしい。
普通なら頭から信じないが、悟は弟の事を考えると、そういう物もあるのだと少なからず納得してしまう。
「そうか。それでは篠原は黒竹箒について重点的に調べてくれ。あと・・」
奇妙な力が宿る黒竹箒と蝙蝠扇も、それを扱う人間を抑えてしまえば恐れることはない。
「『檜扇』を借りる手配を頼む」
「はい」
『檜扇』という言葉に、ほんの一瞬の幻のように表情が固まったアフグ。
もし、『檜扇』本人と対面したら彼はどうなるのだろうか。
悟はうっすらと笑みを広げた。
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