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なぜか人の家のダイニングでくつろいでいる、アフグに瓜二つの見知らぬ男も、その扇子と同じ金色の髪を肩口まで伸ばし、貝のように結び重ねられた六本六色の糸で一つに小さく束ねている。
糸が長いために糸の端は背中辺りで優雅に揺れていた。
最初に見た時の角度では見えなかったが、彼の左頬から首筋にかけて刺青かペイントか、見事な花が描かれている。
よく見れば右手の甲にも花の絵があった。
服装は高級感漂う実用性よりも派手さを重視した洋服。
その全てが彼の周りにセレブと形容するにふさわしい煌びやかな雰囲気を作り出している。
冷涼と実用を重視した簡素なアフグとはまるで逆な存在だった。
「彼はヒオウギだ。俺の得意先の知人でしばらくここで預かることになった」
「・・・・・・・」
兄の言葉に透はじっとヒオウギを見つめるだけで何も答えられない。
ヒオウギの見た目、雰囲気、何から何までが、透にヒオウギがアフグ達と同じ存在であることを訴えかけている。
アフグ達と同じ妖怪やら妖という存在であるということを。
兄はそのことをわかっているのだろうか。
気になって兄を見ようとしたが、兄の指先が視界に入って、透はヒオウギに視線を戻した。
「よろしくね」
そう言いながらにこりと笑うヒオウギ。
その笑顔はアフグと全く一緒だった。
「・・・よろしく」
透は少し間を開けてつぶやく。
兄がわかっていてもいなくても、妖怪やらなんやらの話を兄とすると考えただけで恥ずかしさがこみあげてきた。
なので、ヒオウギのことをとりあえず認めて関わらないようにしようと決める。しかし、
「俺は明日も仕事があるから、ヒオウギに町の案内でもしてあげてくれ」
「はぁ?!何で俺が!」
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