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透は抗議の声をあげたが、兄もヒオウギもまるで聞いてくれず、
「ここに僕に似ている人がいるって聞いたんだけど、会えないかな?」
「そうだ。この町では鈴森神社が有名らしいから連れて行ってあげたらどうだ?」
兄は鈴森神社にいるアフグがヒオウギに似ていることをわかって言っているのだろうか。
初めて鈴森神社に行った時に兄の声が聞こえてきたから兄もそこにいたのだろう。
でもアフグと会っていたかどうかはわからない。
兄が何を考えているのか全くわからない。でも、
「明日は鈴森神社に連れて行ってあげなさい」
提案口調の命令。
兄はヒオウギを鈴森神社に連れていかせたいようだ。
兄の庇護を受けている透に拒否権はない。
「ところで、その花は刺青なのか?」
素直に兄の言葉に従いたくなかった。
だから、兄に対しては何も答えずに、透はヒオウギの刺青のような、ペイントのような花に注意を向けて話をそらした。
そして透がその花の絵に手を伸ばすと、ヒオウギはその手をふっと避けて、
「汚れたら価値が下がっちゃうから、触らないで」
透はやっぱりこいつと関わりたくないと思った。
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