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「今度から夜の商店街のパトロールを始めるんだってね」
ちこは地道に草をむしりながら話しかける。
「シャッターとかに落書きされたり、花壇を荒らされたりしてるからな」
「ったく、迷惑な話だ」
ちこと同じように草をむしっていたアフグとホウキが言葉を返す。
彼らはパトロールに参加することになっているのだ。
「この前は隣町の不良に絡まれるし、なんか最近こういうの多いよね。やっぱりあの人たちが何かしてるのかな?」
「あの人たちって、この神社潰して工場建てようとかしてる奴らの事?それにしちゃ、やることせこいな」
「他にもさ、最近ちょっとした怪我を皆よくするんだよね。お弁当屋さんはこの前火傷したって言ってたし、八百屋のおじさんも段差に躓いて膝痛めたらしいし」
「それは偶然だろ。それともこの町に呪いでもかけてるのかね?それにしちゃ、起きてる不幸もせこせこしいのばっかだけど」
ちこはため息をつき、草をむしる速度が落ちる。
アフグの方は小馬鹿にした笑みを浮かべながら、先ほどと変わらぬ速度でむしり続けている。
そこにホウキが悩むように手を止めて、
「んなことして、どうすんだ?」
「この神社に御利益がないって思わせたいんじゃないのかな?御利益もない神社より、工場を建てた方が有益だって思わせて、町の人々も味方につけてこの神社を潰そうとしているのよ、きっと」
ちこの口調は不機嫌で、草もブチブチ引きちぎるようにむしっていく。
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