兄弟扇子

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「・・て、カワホリさん戻って・・・」  ヒオウギの声を聞いてちこは顔を上げ、そしてヒオウギを見つけ、 「えっ?!誰?!」  ちこは飛び起きた。  ちこの驚きの声にホウキも顔を上げる。 「透君!この人誰?」 「えっと、・・こいつは・・『ヒオウギ』って言って・・」  ちこはヒオウギの金髪やペイントに目を走らせており、透は何と説明しようか迷う。  ちこは不躾に突っ込んでくるからできれば兄のことは話したくないのだが。  透が口ごもっているうちにヒオウギ自身が口を開き、 「どうも、僕は『ヒオウギ』で・・」 「何騒いでんだ?」  ヒオウギの声が同じ声に遮られる。  見ればアフグが明るい表情でお守り売り場の裏手から出てきているところだ。  手には三人分のお茶が乗った盆を持っている。 「蝙蝠扇!」  アフグの姿にヒオウギが歓喜の声を上げ、 「っ・・・」  ヒオウギの姿と声にアフグの明るい表情は一瞬にして凍りついた。  ヒオウギは驚きと困惑で固まってしまったアフグに寄って行き、 「久しぶり、蝙蝠扇。やっぱり『アフグ』って君のことだったんだね」 「・・・・・・」 「本当にいつぶりかな?千年は昔?あ、そうだ!」  凍ったまま何も言えないアフグの前でヒオウギはぺらぺらしゃべる。  そして、何か思い出したように声を上げると、うっすらと唇に笑みを広げた。 「姫様の嫁入りの時に、君が捨てられて以来だね」
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