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「そいつはな、冬の雪の中に埋もれて初めて『気持ちがいい』とか言うような奴でな、ずっと雪に埋もれているんだと言い張って、結局水気吸いすぎてしばらく天日干ししなければ動けなくなるような奴なんだ」
「そんな奴いるわけないだろ」
ヒオウギが不機嫌に顔をゆがめてつぶやく。
「あぁん?お前ら、オレのことバカにしてんのかぁ?」
アフグとヒオウギの言葉に反応したのはホウキだった。
アフグが今話した『奴』というのはホウキのことらしい。
ホウキは黒竹箒を構えようとしたが、
「してない。してない」
アフグが蝙蝠扇の扇ぐ方向を自身からホウキに向けると、ホウキは満足したように長椅子に寝っ転がる。
そうやってホウキのご機嫌をとってから、またアフグは自身を扇ぎはじめて、
「それで、檜扇はここに何しに来たんだ?」
またアフグは冷たくヒオウギに言い放つ。
ヒオウギは悔しそうに妬ましげな眼でアフグを一瞥してからアフグ達に背を向けて、
「帰る」
ただ、それだけ言い残して歩き出すヒオウギ。
蝙蝠扇でパタパタ自身を扇ぎながらヒオウギの背を冷たく見据えるアフグ。
何の口も挟めなかった透は、ヒオウギを追いかけるべきか、彼自身の能力のせいもあり冷ややかな空気を身にまとうアフグの所に留まるべきか迷う。
迷い、透と同じように呆然と二人のやり取りを眺めていたちこを見るが、何の答えも得られなかった。
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