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・・・・・・、はい、おしまい」
「その後、蝙蝠扇は鈴音様に捕まって、改心するんだよね?」
乱暴に話し終えたアフグに、ちこは付け加えた。
「そういうこと」
「それで、この話に出てくる姫様に新しく与えられた『見た目の美しい豪華な扇子』てゆうのが『檜扇』なの?」
「・・・」
ちこの核心に触れた問いかけにアフグは答えなかった。
アフグがこの話をしたくないであろうことは、もちろんちこにもわかった。
でも、この町の人々には伝わっておらず、『カワホリアフグ』にのみ伝わる『蝙蝠扇』の悲しい真実をちこも知りたかった。
「・・・そうだよ。そして、それを作った職人は『蝙蝠扇』を作った職人だった」
ちこがじっと見続けたので、アフグは観念して話し始めた。
「『蝙蝠扇』は夏にしか使ってもらえない。だから職人は年中使ったり飾ってもらえる『檜扇』を作り、姫様にあげた。姫様が嫁ぐまでは二つともよく使ってくれていて、嫁いだ時も二つとも連れていってくれた。けど、そこで『蝙蝠扇』は捨てられてしまったんだ」
アフグは遠くを眺めながらそれだけ言うと、ぱっとちこの方に向きなおって、
「で、後はお話の通り」
『カワホリアフグ』がこの話を物語に加えなかったのは、『蝙蝠扇』が作りの親である職人にさえ不要というレッテルを張られたことになってしまうと思ったからだろう。
それは子供に語る物語としてはあまりにも悲しい。
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