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「ずーっと姫様の幸せを見守り続け、姫様が死んでしまった後も姫様の子や、またその子供や、ずーっと姫様の子孫を見守り続けた」
嬉しそうな、楽しそうなヒオウギ。
でも、さっきの話では、その後彼は売られてしまう。
ヒオウギもそれを思ったのだろう。
軽く、透に気付かせないように小さなため息をつき、笑顔を消して黙り込んでしまう。
鈴森を超え、田んぼの広がる畦道。蝉の声も遠い。
グゥ~~
妙に静かなその場所で、透の腹が鳴った。
『・・・・・・』
透は腹を押さえてうつむいた。
うつむいていてもヒオウギの視線を感じる。
うつむいたまま腕時計を確認すると、昼食にはちょうどいい時間になっていた。
「戻って、昼飯にしよう」
透はヒオウギを見ないように方向転換すると、来た道を早足で戻りだす。
「おなかすいて早く戻りたいのはわかるけど、土が舞うからもっとゆっくり歩いてくれない?」
透の恥ずかしさを煽るようなヒオウギの言葉に、透はもっと土を舞い上げてやろうかと思った。
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