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透は手に二人分の昼食を持ち、商店街出口にある信号機でぼんやりと赤色を眺めながら立っていた。
金髪やペイントとか無駄に目立つヒオウギは、弁当を買ってくる間、近くにあるベンチで座っているよう言ったのでいない。
「よぅ、透じゃねぇか!」
そこに横から肩を勢いよくはたかれた。
驚いて振り向けば、よく鈴森神社で会う小学生たちが自転車に乗ってにやにや笑っている。
「これからおれたち川に行くんだ~」
羨ましいだろ、というように小学生たちが言ってくる。
全くもって羨ましくない透は、小学生たちを軽く無視して青色へと変わった信号を渡ろうとする。
小学生たちも透の希薄な反応につまらなさそうに唇を尖らせて、彼とは違う方へと去っていこうとした。
その時、透ははっと気が付いて、
「ダメだ!川に行っちゃダメだ!」
去っていく小学生たちの背に向けて叫んだ。
小学生たちは透のいきなりの叫び声に驚いて、急ブレーキをかけたり、バランスを崩して倒れそうになったりする。
そして、そのうちの一人、さっき透の肩をはたいた子だけが運悪く、バランスを崩した所に段差があって横転した。
「たけちゃん、大丈夫?」
「いってー!もう!透が大声出すからこけちまったじゃねぇか」
「あっ・・・」
横転した子を『たけちゃん』と呼びながら、傍にいた友達が自転車を起こす。
たけちゃんはぶつけた所をさすりながら立ち上がり、彼に駆け寄ろうとした透に対して文句を言った。
立ち上がったたけちゃんの足は痛々しくすりむけて血が流れ出していて、その血と言葉に透は動けなくなってしまう。
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