もう一組の兄弟

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 商店街からは「何だ、何だ」と大人たちが集まりだして、透や小学生たちを囲み始める。  大人たちが事情を聴き、小学生たちが事情を話す。  透がいきなり叫ぶから、みんなびっくりしてバランスを崩してしまったと。  大人たちはその話を聞いて、透になぜ急に叫んだのかを問う。 「・・・・」  透は答えられなかった。  ただ、大人たちが事情を聞こうと自分に近づいてくることが怖かった。  不運を止めようとして動いた結果が別の不運を生んだ。  自分は何をしても周りを不運な目に合わせてしまう。 「君、大丈夫か?」 「透君、どうかしたの?」  鈴森神社などで透を知っている人も、透の事を全く知らない人も、透の異変に気がついて透に手を伸ばしてきて、 「触るな!俺に触るなぁ!」  透はわめき散らして、ヒオウギと自分の二人分の昼食が入った袋を振り回した。  大人たちがびっくりして後ろに退く。  退いても、また近づいてくるのではないか、それが怖くて彼はぶんぶんと袋を乱暴に振り回した。  だけど、 「今日はまたずいぶんと威勢がいいね」  透はあっさり捕まった。  気付けば後ろから誰かが腕ごと抱きついていて、その抱きしめる力が強いために身動きが取れない。 「誰だよ!放せよ!」 「だ~れだ」  耳の真横で聞こえたおじさんの声。  口調のお気楽さに透は腹が立ち、 「お前が、・・お前が不幸になるんだぞ!」 「・・それは、どういう意味なのかな?」  彼の言葉を否定するでも、馬鹿にするでも、不審に思うこともなく、ただ落ち着いていて柔らかな笑みを含んだ優しげな声で問いかけられた。
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