もう一組の兄弟

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「怪我をしない人間なんていないんだよ?たけちゃんだって今日の怪我以外にもたくさんかさぶた作ってるし。透君に触った後に怪我をしたのは偶然だよ」 「・・偶然なんてない。あるのは必然だけだよ・・」  拓郎の気楽な言葉に透は昔読んだ漫画のセリフをつぶやく。  友達だった奴が読んでた漫画。  その友達は透を疫病神と呼ぶようになった。 「それじゃ必然と考えるとして、それなら何で、木田さんとちこはまだ怪我をしていないんだろうね。うちの神社にいる時の君はこんな風に人を遠ざけてもいなければ、そこで関わった人は別段不運に見舞われていないのは何でかな?」 「・・・」  拓郎の問いに透はすぐには答えられなかった。  確かに木田のおばさんにスイカをもらった時、無駄にたたかれまくった。  でも次の日も木田さんは元気な様子で今度はトウモロコシを鈴森神社で配っていた。  それに透自身、自分が疫病神であることを認めていたはずなのに、あの神社では何だかんだとホウキやちこと騒いでいて、人をこんな風に拒絶しなかった。  拒絶しなくても平気だった。  やはりあの鈴森神社は特別なんだ。 「だからね、君のせいじゃないんだよ。私がこの後怪我をしたって、君のせいにするつもりは全くない」 「・・それでも、俺のせいだよ」 「う~ん、まだわかってくれてないみたいだなぁ」  拓郎は透の目を見つめてきて、あの笑顔のまま困ったようにつぶやいた。 「まぁ、とにかく笑っていなさい。笑う門には福来るから」  それでも透が笑わないでいると、 「この後、私に怪我をしてほしくないのであれば、笑いなさい」
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