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「ところで、さっき透君とヒオウギって子に会ったよ」
拓郎がそう声をかけた瞬間、ちことホウキが気まずげな顔をした。
アフグは一瞬、幻のように一瞬だけ顔を強張らせてから、いつもの調子で、
「へ~。お昼前にはここにも来てたよ」
その様子で、アフグとヒオウギに何かしらのわだかまりがあることが拓郎にもわかった。
「透君が連れてきたのかい?」
「うん、そんな感じだったよ」
「そうか」
ちこの答えに、フムフムと拓郎が納得してうなずく。
「何、納得してんだ?」
奇妙なほどうなずいている拓郎に、ホウキは寝転がったまま見上げて訊ねる。
「いやね、悟君とは一度ゆっくり話したほうがいいと思ってさ」
「『悟君』って誰だ?」
「ほら、佳奈美ちゃんと一緒にいた男の子だよ」
「男の子って・・・」
ちこがまた呆れたようにつぶやく。
ちこから見れば十歳近くは年上の男を『男の子』扱いしたことが気になるようだ。
だけど拓郎から見たら、彼は『弟一人大事にできないダメな子供』でしかなかった。
「悟さんと話すって、何の話をするの?」
ちこが不満そうに聞いてくる。
透と悟が兄弟であることを知らなければ、悟と話す内容はこの鈴森の地の売買ぐらいである。
そんな話をゆっくり話すのが気に入らないのだろう。
拓郎はちこの頭を軽く、ぽんぽんとたたく。
そしていつものニコニコ笑顔で、
「悟君には少し『お仕置き』が必要だと思ってね。悟君の気持ち次第では、彼はこの神社から手を引くだろう。でも、もし違う出方をしたら・・」
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