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悟が困惑して言葉を続けられないでいると、拓郎がまた悟に言葉を投げかけてくる。
「悟君は、透君を大事に思っているけど、大切にはしていないよね」
「何をっ・・」
「悟君、神社嫌いでしょ?」
拓郎の口からはどんどん言葉が生まれ、悟は聞いて考えるのが精いっぱいで、言い返せない。
「神様も嫌いだよね。だって、大事な弟があんな体質を持っていて、それで多くの人を傷つけて、その分透君自身もたくさん傷ついてきたんだろうからね。
神様がいるなら弟のあの体質を無くしてほしいと思ったんじゃない?それで、弟に何もしてくれない神なんて、役立たずで必要なく、それが崇められていること自体気に入らなかったんじゃないの?」
何も、言い返せない。
昔、入社祝いの酒の席で社長に透のことを洩らしてしまったせいか、自分が相手にするもののほとんどが田舎町の神社であった。
社長に勧められたこともあり、いつも透を連れていった。
一人にしておくのが不安だったし、その地の神が弟を救ってくれるのではと期待していた。
だけど、どこに行っても透と関わった人々は怪我をしていき、結局、神社も森も山も姿を変えていった。
そのうちに、神社も神の存在も信じられないどころか、それが崇められることが理解できなくなって・・・
「透君と仲良くやってないでしょ?」
悟が視線を下げて何も言えないでいると、拓郎が問いかけてきた。
今度は悟の返事を待っているらしく言葉を続けてこない。
「あいつ、反抗期なんだ」
「ただの反抗期で片づけるつもりなら、危険だな」
「なら、俺の何がいけないんだ!」
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