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乱暴な怒鳴り声が聞こえたかと思うと、透の視界が看板から石畳に一気に流れる。
透は左側からいきなりやってきた大きな衝撃に吹き飛ばされて石畳に転がっていた。
「な、何すんっ・・!!」
彼は立ち上がろうとしたが、上から何かで胸を押さえつけられて言葉も途中で止まる。
彼の胸の上にはあの黒い竹箒が押し付けられていて、それを持っているのはやはり彼が美しいと思ってしまった作務衣の女性で、そして作務衣の女性は口を開き、
「『何すん』じゃねぇだろ、礼儀知らずのクソガキが。ちこが話しかけてんだから、きちんと答えろや。それとも何か?てめーの耳は節穴かぁ?」
「ちょ、ちょっと、クロタケさん・・」
想像もしなかったガサツで乱暴な言葉。
巫女装束の少女が作務衣の女を抑えようとしているが、作務衣の女は全く動じない。
先ほどの乱暴な怒鳴り声も彼女の物なのだろう。そして彼女はその言葉と同時に、手に持つ黒い竹箒で透を思い切りよくはたき飛ばしたのだ。
理想が音を立てて崩れていく。
残酷な現実に透は打ちのめされそうになるが、それに抵抗するように彼女の言葉に反抗した。
「俺はガキじゃねぇ!」
「んじゃ、幾つだよ?」
「・・・・十四だけど・・」
「ガキじゃねぇか」
墓穴を掘った。
透は歯を食いしばる。
悔しい思いもあるが、それよりも、さっきから作務衣の女が透の胸に押しつけている黒い竹箒をガシガシと動かしてきて、くすぐったくて、歯を食いしばっていないと笑ってしまいそうだった。
必死で笑いをこらえながら、ニタニタといじめっ子の笑みを浮かべる彼女に向かって、
「そう言うてめぇらだって、俺とほとんど変わんねぇだろ!」
「うるせぇ!」
今度は顔を思い切りよくはたかれた。
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