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「悟君の努力は認めるよ」
拓郎は悟の指先のいたるところに貼られた絆創膏を見つめていた。
悟も指先の傷と絆創膏を見た。
それは、悟にとって決して透を避けなかったことの証。
「でも、それを勲章にしちゃ駄目だよ。はっきり言って、君の見た目にそれは似合わない」
拓郎のため息混じりの断言。
思わぬことを言われて呆然とする悟に、拓郎は視線を戻す。
「悟君の欠点はいくつかある。
まず、無意識のうちに透君を利用している所だ。最初は透君を救ってほしくて連れまわしていたのかもしれないが、今や透君の力を利用して仕事を進めようとしていないかい?
しかも、ヒオウギ君でアフグさんにちょっかい出した時、透君を使っただろ?
あの時から透君、鈴森神社に来なくなったよ。それまでは、ほぼ毎日来てたのに」
「・・俺が、傷付けていたのか?」
「そうだね。特にそれ」
拓郎が悟の指先を示す。
「悟君には誇りでも、透君にはどう映ったのかね?」
悟は指先を見つめなおす。
この傷だらけの指が透にはどう映ったのだろう。
自分が無意識のうちに透を傷つけていた事実に、悟は鉛で頭を殴られた気がした。
「それに、うちを甘く考えていること。透君の体質は死ぬどころか大した怪我でもないから君は甘く考えてる。
アフグさんは悲しみに囚われても本気で人を傷つけられる方じゃないけど、ホウキさんに、黒竹箒にちょっかい出す時は覚悟した方がいい」
ホウキの話になった時、拓郎の表情から笑顔が消えた。
ただの脅しではなく本気なのだと、悟にもわかる。
「とりあえず最後に、」
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