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拓郎がまたいつもの笑顔に戻って、
「明るく心の底から笑いなさい。笑う門には福来るから」
「そんな簡単に『福』なんてこねぇよ」
悟はやっと反論したが、
「透君の不運を呼ぶ体質が顕著になったのって、親がきっかけじゃない?」
「何で、それを!?」
母親は透が物心つく前に病気で亡り、その時は特に何もなかった。
しかし、数年前に父親が事故で亡くなった時に透はふさぎこみ、そしてそれから透を慰めようと透に触れた者が次々に怪我をし始めた。
初めは誰も気づかなかったが、徐々に違和感を覚え、いつしか避けるようになった。
「類は友を呼ぶっていうだろ。陰気な所に陰気なモノは集まる。昔の鈴森がまさにそう。でも、だからこそ、陽気な所に陽気なモノが集まってくる。今は明るく笑顔であふれているから皆の憩いの場となっているんだ」
拓郎はいつもの無害そうなニコニコ笑顔で語る。
「透君も鈴森神社や私の前では笑っていたよ。だからこそ、私はこの前彼を抱きしめたが、この通りぴんぴんしている」
悟は視線をテーブルに落とした。
笑うだけで透が救われるなら、今までの自分の懸念は何だったのだろう。
そして、もうひとつ。
「次、うちの弟に手を出したら、不審者として突き出すからな」
『抱きしめた』という言葉が無性に気になり、そして
「臨むところだ」
その返しに、透に防犯ブザーを持たせることを決心した。
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