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それは当然だった。
これと共にこの土地に伝わる『蝙蝠扇と姫様』の物語もあるが、『蝙蝠扇と姫様』はアフグが自身の事を語っていったものである。
それに対し、『黒竹箒を持った少女』ではホウキは自分の事を全く語らなかったために、鈴音の子孫が他の土地にあった黒竹箒の話から都合のいいように作りだしたものなのだ。
ホウキは『黒竹箒を持った少女』の物語を思い出す。
【昔々あるところに、不思議な竹箒を持った少女がいました。
少女はよく竹箒を振り回していましたが、誰も彼女を怒りません。
なぜなら少女の竹箒ではたかれると、皆心がすっきりするからです。
悲しい気持ちも掃き飛ばされ、辛い気持ちも掃き飛ばされ、皆笑顔で元気になりました。
ある日そこに悪い霊媒師がやってきました。
霊媒師はその竹箒が欲しくて仕方がありません。
そして霊媒師は少女に物の怪が付いていると嘘をつきました。
村人たちは霊媒師の嘘にすっかり騙され、少女を捕まえ、少女にひどい仕打ちをしました。
少女は訳もわからず村人たちに傷つけられ、そして死んでしまったのです。
村人たちに傷つけられた少女の怨みは不思議な竹箒を真っ黒に染めてしまいました。
そして少女は怨霊となって黒くなった竹箒を振り回したのです。
黒い竹箒にはたかれた村人たちは、普段我慢している恨みや憎しみをはたき起こされ、まき散らされ、村人たちはいがみ合うようになりました。
お互い協力することも、信じることもできなくなった村人たちは次々に村を出ていき、村はなくなってしまったのです。
そして、その村には、自分の死を納得できない少女の怨念と黒い竹箒が残されたのでした。】
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