黒竹箒の狂気

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 この物語は、実にホウキにとって都合のいいように作られた話だった。  なぜなら、この中の少女は初めは村人に愛されているし、竹箒も元から人の邪気や妬み嫉みといった心の汚れを掃き祓う道具として出てくる。  本来は全く違うのに。  そしてそのことを佳奈美は言っているのだ。 「この『黒竹箒を持った少女』では、黒竹箒は今の使い方が本来の使い方であるように書かれていますが、実際は違いますよね。そして、もっと残酷で危険な話。私が調べた文献にはこんな話が載っていました。 【その昔、とある村で物の怪に憑かれた女がいた。  言動は女のものとは思えない、ガサツで乱暴なもので、竹を振り回し村人を困らせていた。  その村に霊媒師が現れ、村人に助言した。  物の怪を葬るには、女を生きたまま燃やさなければならない、と。  そして女は村人につかまり、いつも振り回していた竹にくくりつけられ燃やされてしまった。  女は跡形もなく燃えてしまったが、なぜか女をくくりつけていたはずの竹は残っていた。  しかしその色は女の灰を被ったせいか真っ黒になっていた。  この黒い竹には霊力が込められていると思った霊媒師は、その竹で竹箒を作った。  それは生きたまま燃やされた女の怨みと物の怪が込められた黒い竹箒となった。  この黒い竹箒にはたかれたり、掃かれた人間は、堪えていた妬み嫉みをはたき起こされ、それぞれが身勝手な行動をし、ついには殺し合いを始め、村は壊滅した。  そして黒竹箒は生き残った村人の手によって次の村に運ばれ、その村も壊滅し、それを繰り返していった。 】
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