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この文献によれば心の汚れをまき散らせる方が、黒竹箒の本来の使い方であることがわかります。貴方ではそれが制御できないために、今のような使い方をなさっているのでしょう?」
すらすらと何も見ずに佳奈美はホウキに語る。
その強気な態度がホウキには馬鹿らしくて、
「お前、何もわかってねぇんだな」
「何がですか?」
ホウキの言葉に佳奈美は少々喧嘩腰で問い返す。
ホウキは面倒そうに頭をかきながら、
「まず、女に物の怪なんて憑いてはいなかった。ただ、母に早死にされ、父は乱暴者で見捨てられ、そのせいで村人たちからはいじめられ、それでも生きてくために必死で戦っていたんだ。そして、それを物の怪付きと呼ばれた」
「そこが違うからなんだというのですか?所詮は古い文献です。結果は同じでしょう」
佳奈美は文献の内容で自分を非難されたことが気に食わないらしい。捲し立てるように反論してくる。
佳奈美にとっては何の気なしのただのいい訳かもしれないが、その言葉はホウキの怒りに触れる。
暑さもあってホウキの苛立ちは大きく、彼女は黒竹箒を手に立ち上がろうとした。
ちりん
髪の結び目と黒竹箒の柄についた鈴が鳴り、彼女は一瞬固まって座りなおす。
ホウキが言い返してこないことで、佳奈美は自分の正しさが認められたと思ったらしく、また勝気な態度で言葉を放つ。
「本来の使い方で使うことのできない、あなたのような少女がその竹箒を持つよりも、私の方がうまく黒竹箒を使いこなすことができます」
そして手をホウキの方に伸ばしてきて、
「だから、黒竹箒も『クロタケホウキ』という名も私に譲りなさい」
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