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堂々と言い放つ佳奈美をホウキは呆れたように見つめ、そしてまた大きくため息をつく。
「本当に、何にもわかっちゃいねぇんだな」
「小娘の分際で、馬鹿にするんじゃないわよ!」
ホウキの佳奈美を馬鹿にしたような態度に、佳奈美は憤慨して彼女に駆け寄り、そしてその頬を叩こうとする。
ホウキはその叩こうとした手に気を取られた。
しかし、それはフェイントだった。
ホウキがその手に気を取られた隙に、佳奈美が見事な動きで黒竹箒にもう一方の手をかける。
ホウキは反射的に黒竹箒をしっかり握ったので何とか手元に留めることができたが、佳奈美は諦めず黒竹箒を奪おうとする。
ホウキと佳奈美はお互い黒竹箒をつかんで引っ張り合った。
「放しなさい!これは私がうまく使ってあげるわ!」
「これをそういう風に使おうとするやつが、使いこなせるわけがねぇんだよ!」
「甘く見ないで!」
「甘く見てんのはそっちだろ!」
暑さが祟る。
ホウキの脳裏に昔の光景が鮮明に蘇る。
振り回した竹をつかまれて、そのまま村人たちに捕まってしまった自分。
そして自分は・・・
村人たちへの怨みがぶり返す。
でも、それを抑えるように、奪い合われている黒竹箒の柄についた鈴がちりちり鳴る。
髪の結び目に付けた鈴も必死になって鳴っている。
その摩擦でめまいがして、ホウキの手が緩んだ。
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