黒竹箒の狂気

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 その隙を逃さず佳奈美はホウキから黒竹箒を奪い取る。 「くそっ!返せ!」  ホウキはとっさに手を伸ばしたが、あっさり避けられた。  佳奈美の動きが素早いということもあるが、暑さと苛立ちと鈴の音で、うまく体が動かない。 「これは、私が譲り受けるわ」  佳奈美は勝ち誇っていた。  その佳奈美の眼が黒竹箒につけられた鈴に向けられる。 「それにしても、さっきからうるさい鈴ね」  佳奈美の手が鈴を握る。  ホウキの頭から血の気が引いていく。 「やめろ!」  ホウキは手を伸ばして佳奈美に突っ込んだ。  しかし、それよりも早く、佳奈美は黒竹箒から鈴を引きちぎり、地面に捨てた。  ホウキの髪を結んでいたひもが切れ、  ホウキの髪にくくりつけられていた鈴が、滑り落ちる。  長い漆黒の髪は乱れて広がり、そして、ホウキは空気中に溶けるように、佳奈美に吸い込まれるように、その姿を消した。  しかし、佳奈美は気にしなかった。  人が一人消えたことなんか気にもならなかった。  ただ、ふつふつと苛立ちが湧きあがる。  腸煮えたぎるような怒りがこみ上げる。  頭がガンガンするほどの憎悪を感じる。
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