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さっきは無視したという理由ではたかれたが、今回は完全なる理不尽な暴力だった。
しかもあんなガサガサな竹箒で顔をはたかれたら、顔中蚯蚓腫れに・・
そう思って彼は自分の顔に触れたが、そこに傷らしい傷はなかった。
あんなに思い切りよくはたかれたのに。
「君、大丈夫?クロタケさん、やりすぎですよ!」
茫然として動かなくなってしまった透を心配して、巫女装束の少女が声をかけてくる。
作務衣の女の方はやはり動じずに堂々とこちらを見下ろしていて、
「その竹箒、普通の竹箒じゃないのか・・」
「へぇ、よくわかったな」
彼が思ったことをそのまま口にすると、彼女は隠すこともせずやはり堂々と返してきた。
ここの空間は初めから普通じゃないと思っていた。
そしてこの黒い竹箒も普通ではないもの。
そんな普通ではないものを普通のもののように扱う彼女に自分は魅せられてしまっ・・・
「やっぱり、クロタケさんが強くはたきすぎたせいで、どっか頭打っちゃったんじゃないですか!しかも変なこと言っているのにクロタケさんも話に乗らないでくださいよ!」
巫女装束の少女が、この神社の不思議を全面否定した。それどころか、
「別に俺は頭打ってねぇし、変にもなってねぇ!」
という透の言葉に、哀れな目を向けてきて、
「中二病なのね」
「はぁ?!ちげーよ!」
なんて彼の言葉は意味をなさず、
「何だ?『チュウニビョウ』てのは」
「中二の子がなりやすい病気でね・・」
「ほぅ、こいつは病気なのか。早く治せよ」
彼女たちはそんな会話をしたかと思うと、作務衣の女がまたガシガシと黒い竹箒で透の腹を突いてきて、今度はそのくすぐったさに我慢もできず、透は大きな笑い声をあげた。
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