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親子、友人関係なく村人同士が殺し合う凄惨な光景が、アフグの脳裏に蘇る。
ホウキを初めて見たのもそんな現場であった。
この町にあの光景を再現する訳にはいかないのに、
「え?え?じゃあ、クロタケさんは人間じゃないんですか?」
「当たり前だ!お前、産まれた時からずっと一緒にいて、俺たちの見た目が全く変わらないことに気付いてなかったのか?!」
「そろそろ、アンチエイジングの秘訣を教わろうと思ってたのに・・」
「・・・」
ちこの見当外れな発言にアフグは絶句するも、何とか気を取り戻して、
「さっさと拓郎に連絡しろ。佳奈美はもちろんだが、透の方も様子がおかしい」
「う、うん!」
ちこもやっと事の重大さをわかってくれたらしく、慌てて拓郎に電話する。
「カワホリアフグさんだったかしら。貴方も彼にとって、とーっても邪魔な存在なのよ」
ゆっくりと歩き出している透から眼を放して、佳奈美がアフグに向き直る。
燃えるような怒りで動いているのなら、アフグは冷やして動きを止めることができる。
だが、佳奈美は冷静に何が邪魔で何が邪魔でないかを考えて動いてきている。
この場合は人体にかなり影響が残るが、筋肉自体を凍らせるぐらいに冷やして物理的に動きを止めるしかない。
佳奈美がアフグに突っ込んで黒竹箒を振ってくる。
アフグはそんな佳奈美に向けて蝙蝠扇を扇ごうとした時、
「僕を見てよ!」
ヒオウギの叫び声にアフグは気を取られた。
そして、アフグは黒竹箒に掃き払われる。
その衝撃で蝙蝠扇につけられた鈴が外れ、アフグの耳につけられた鈴も外れて落ちる。
「カワホリさん!」
ちこの叫び声が聞こえたが、アフグはすぐには立ち上がれない。
ちこがアフグを起こしにやってきて、彼女に無理やり顔を上げさせられた。
その視界にヒオウギが映る。
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