下界狂騒曲

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そうして二人は近くの国の関所に到着した。 「どこの国かしらここ。」 「確かティムス公国だったはずだ。」 そして入国者の列が減って行き、いよいよムノ達の番になる。 「君達は何故この国へ?」 ゲロッツ邸の門番とは大違いな入国審査官が二人に質問する。 「ええ、自分らは夫婦なのですが本来ディンジー王国に行くつもりだったのですが……」 「あぁ、成る程……ここ最近でそういう人は増えましたからね、どうぞお通りください。」 無事通過。 まさか入国審査官も目の前の二人が件の王国を滅ぼした元凶とは思うまい。 人は見かけで判断出来ないから人なのだ。 「随分賑やかなんだな。」 「そうね、あ!これ美味しそう。」 「おねーさん、それ二つ。」 「あらヤダ!おだてても数が一つ増えるだけよアッハッハッ!」 果物屋のおばさんから赤い果実を買うムノ。 「あんた達恋人かい?」 「「夫婦です。」」 「あらぁー!新婚さん?だったらもう一つおまけしてあげる!!」 二つ買うはずが四つに増えた赤い果実。 そしてムノは周りのミラに声をかけようとしていた男共が離れて行くのを感知していた。 「ふふっ。」 おばさんがムノに親指を立ててサムズアップする。 どうやら彼女が男払いをしてくれたようだ。 「ありがとうございます。」 二重の意味でおばさんに礼を言ったムノは財布から銅貨を出して勘定を済ませた。 「ふふっ、いい人だったわね。」 「だな。」 赤い果実を齧りながら歩いて行く二人。 と、 「角劔(つのつるぎ)が出たぞぉぉー!!」 誰かが大きな声でそう叫んだ。 すると、民衆が大喝采をあげる。 「な、なんだ!?」 「すごい喜び様ねー!!」 大声で話さないと互いの声が聞こえないのだ。 ムノは周りの大喝采の中から、「祭り」のワードを聞き取った。 「どうやら角劔とやらが来ると祭りをするみたいだー!!」 「え?何ー!!」 「祭りだー!!」
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