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「どうするムノ……殺す?」
「俺でも避けるのが精一杯な弾丸を笑顔で放つ相手に?」
「………。」
沈黙してしまうミラ、彼女の頭を撫でつつムノは考える。
(俺よりも強い奴はいる、世界は広いな……)
ムノは心の何処かにあった油断を戒めるかのように一度拳を握り、ミラを連れてユグドラシルへ戻ったのだった。
スラム、そこを小柄な老人と黒服の傷の大男が二人歩いていた。
「いいんですかいドン、奴らダンジョンマスターじゃあないんですかい?」
「ふぉふぉ、確かにあの青年もその妻も儂等のように【狂った目】をしていたがの、それだけじゃ。
この国に何かをしようというわけでもあるまい。」
「しかし!」
「人の恋路を邪魔する奴はケンタウロスに蹴られるぞいラッツェ。」
「む……ドンが仰るなら。」
「やや、着いたぞ!」
老人は懐から先ほど拾った爪程の小石をポケットから出し、小石を持っていない右手でドアをノックする。
「はーい!!」
どたどたと音を立ててドアが勢い良く開けられる。
中から出て来たのはお目当ての青年ではなく、オレンジ色の髪の少女。
「えと、お爺様達どちら様?」
「それは後々説明するぞい、とりあえずレオ君は在宅かね?」
「兄ちゃんですか?おーい兄ちゃーん!お客さんだよーー!!」
少女が家の中に叫ぶと、
「近所迷惑も考えろティナ!えーと、どちら様で……」
「ひょっとな。」
びゅご!!
「!!がっ!?」
老人の左手から勢いよく弾かれた小石は顔を反らした青年、レオの目の下に傷を入れて家の中へ飛んで行き、壁に減り込んだ。
「兄ちゃん!?」
「ほう!見ろラッツェ!この若いのも避けよったぞ!!」
「見てます見てます。」
「あんたら……何もんだ!?」
目の下から血を滴らせつつもファイティングポーズをするレオに、その後ろで心配そうに兄を見つめる少女。
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