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男は自分をトルスと名乗った。
「俺は……ある、人里離れた森の中、で……ある魔女、と、暮らしていた……ガハッ!ゲホッ!!」
血反吐を吐くトルス、ムノも魔術を扱えるが扱えるだけで本格的に修めているわけではないため、治癒魔術を知らないのだ。
「で、人里離れた森の中で魔女と住んでいたお前が何故こんな場所に?」
「フェナ、が……ウィっ、ウィッチィード、に…無理、矢理連れて……いかれたから、だ。」
そこから途切れ途切れながらトルスの話した内容をまとめると、
ウィッチィードは魔女を見境なく【保護】している。
魔女を保護するためなら魔女以外の存在を殺すことを厭わない。
保護対象の魔女が拒んでも無理矢理連れて行く。
トルスの恋人で魔女のフェナもその一人。
「頼、む……!フェナ、を……助け……」
それを最後にトルスから力が抜けた。
「…………。」
ムノはトルスの首筋に触れ、脈を測り……
「ぐごごご……くかー……。」
「寝てるだけかいっ!!」
盛大にコケた。
ウィッチィード中央、白亜の塔。
その最上階にミラはいた。
「で、こんな場所に呼び出したご本人はどこにいるのかしら?」
辺りを見渡すも、豪華な調度品があるのみで他に人の気配はない。
しかも自分を連れてきた鎧の魔女達はミラをこの広間に案内するとさっさと広間から出て行ってしまった。
「にしても蝋燭が多すぎではないかしら。」
ミラのいる部屋には、天井のシャンデリアを始めとして、壁、柱、机、ありとあらゆる場所に蝋燭があり、その全てに火が灯っていた。
「早くユグドラシルに帰りたいわ……。」
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