魔女の国

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【グングニル】、正式名称を【反物質永続照射砲】。 ユグドラシル内の反物質ジェネレーター内でこの世界を構成する正物質とは真逆の性質を持つ反物質を作り出し、それを照射する。 反物質はその際たる特徴として正物質に触れると【対消滅】という現象を起こす。 その際、1gの質量は約 9×1013(90兆)ジュール のエネルギーをその場に残し…… わかりやすく言えば物凄い消滅の爆発を起こす物質なのだ。 ユグドラシルでは反物質ジェネレーター内の粒子加速器内で生成した反物質を集め、砲塔から放つ。 この際に密度の高い物質による誘導を行う。 今回の一割発射だがその威力は【一秒間の照射】で滅核弾頭五発分の威力である。 この【グングニル】の最も恐ろしいところ、それは【魔力】も貫通することだ。 反物質ジェネレーター内では物質から生成される反物質以外にも【魔力】から生成される反物質も作られているのである。 そのため【グングニル】は防ぐことは事実上不可能、その槍の前では全ては滅び消えるのみである。 話を戻そう、放たれた【グングニル】は白亜の塔の頂点を消し、街に斜めに大穴を穿った。 だがこれで終わりでは無い。 反物質はあくまでも誘導されているだけ、本番はこれからだ。 直後、残留した反物質が一斉に酸素粒子や瓦礫の原子などと対消滅を起こし、白亜の塔と大穴を中心に消滅の爆発を巻き起こした。 「わぁー……」 白亜の塔の周りが何らかの儀式のために家屋が無いのが幸いしたのか、消滅に直接巻き込まれた家屋は無い、ただ対消滅の衝撃波で中心付近の家屋が文字通り吹っ飛んだ。 既に白亜の塔は根元を僅かに残して完全に消えている。 「ミラのいる空間には【反物質の】結界を作ってあるからダメージはうまく相殺できるみたいだな。」 それに衝撃波の方は別に魔力由来のシールドでも防げるのだからウィッチィードの民も何とかなるだろう。 今回は『穏便』に済ますことができたなぁ……と、考えながらムノはウィッチィードの端に位置するここまで衝撃波が来たというのに幸せそうによだれを垂らすトルスの足をつかんで引きずりながら白亜の塔跡地へと進んだのだった。
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