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そこに在ったのは地面に垂直に突き刺された一本の剣。
瘴気さえなければ天井に空いた穴から差し込む光でさぞや美しい光景になっていたのであろうが、瘴気が剣から噴き出しており神々しさの欠片もなく、ただただ毒と禍々しさを撒き散らしていた。
「ミラ、何か分かった?」
「……おそらくあの剣は元々は聖剣と呼ばれる類のものだったわね。
それが長い年月をかけて瘴気に浸食されて堕天……とでも表現すればいいのかしら?邪悪なる魔剣に変わっていったのね。」
「ほう、魔剣。」
「おそらく地下に瘴気の溜まりみたいなのがあってこの剣の元々の持ち主がそれを知らずにここに突き刺したせいで瘴気の溜まりに傷をつけてしまった。
そこから瘴気が漏れ始めたのだけど剣がそれを最初は吸収していたようね、でも限界を越えたから魔剣となり、瘴気の発生源と成り果てたのよ。
おそらく溜まりから吸い上げた瘴気が雲となり、雨に含まれて地に染み込み、また吸収……とループを繰り返しているのね。」
ミラは既に説明する気はなく、独り言のつもりで話している。
何故ならばムノはずっとその件の魔剣に見入っているからだ。
「堕ちた聖剣、実に俺好みだ。」
瘴気の含有量が大気中の物質を超過しているがために、紫色のベールのようになった空間を苦もなく掻き分けて、ムノは魔剣の元にたどり着く。
「どれ、一つ抜いてみようか。」
そしてなんのためらいもなく、抜く。
「───────!」
【情報処理開始。】
【大量の情報が艦長の脳にインストールされたため、一時的に艦長の全機能を停止します。】
【………】
【……………】
【……】
【処理完了、再起動します。】
「───────っは!?」
そしてムノの意識が引き戻される。
その時にはムノの脳にはこの剣の名も歴史も何もかもが刻まれていた。
「ムノ、大丈夫?」
「あ、あぁ……問題ない。」
しかし分かったこともある。
「この魔剣の銘は……カオスディザスター、使い方も能力も全部分かる。」
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