屍の少女

8/11
前へ
/181ページ
次へ
「さっきミラはこれが瘴気を地面から吸い上げるポンプのようなものだと言っていたが違う、これ自体が瘴気を生み出しているんだ。」 「あら、ちゃんと聞いてたのね。」 「目は釘付けでもちゃんと耳は傾けてたさ、この剣はエネルギー、魔力気力精神力問わず何らかの力、エネルギーを糧に瘴気を発生させる。 しかも瘴気を操作することもできるから汎用性は高い。」 「あら……それは興味深いわね。」 ミラが注目したのは魔力以外のエネルギーという点、それはつまり魔力以外にこの魔剣を動かし得る未知のエネルギーが存在『するかもしれない』ということだ。 「私も目当ての鉱石は根こそぎ得られたから……帰りましょうか。」 「あぁ、だがその前に。」 ムノは自分たちが来た道を見る。 ムノの視力によって濃密な瘴気の先まで見通した光景、そこには『何者』かと『何者達』が戦闘を始めていた。 「あぁぁああぁああ!?」 僧侶の腕が食い千切られる。 切断面を治癒しようにも瘴気が纏わり付いたことでそれは叶わず、切断面の血管から全身に瘴気が回ったことで僧侶は全身の皮膚を、血を、肉を、骨を変色し侵蝕し腐食させながら朽ち果てた。 「なんなんだ!なんなんだよ一体!?」 勇者と呼ばれた少年の悲痛な叫びが洞窟に響く。 聖職者が張った聖なる障壁によって『遭遇者』の攻撃はなんとか届いていないが障壁が割られるのも時間の問題だ。 「あれはこの世に存在していいものじゃない、ここで何とかしないと!!」 聖職者が障壁を維持しながらも教会の神によって祝福された杖を用いた聖なる術を放つ。 杖から噴き出した光は矢となり邪悪を貫き滅するべく放たれる。 ぱくん。 しかし、それすらも遭遇者は喰らう。 顔から噴き出す闇は光を飲み込まんばかりに黒く深く、その邪悪さに見合わぬ小さな口が矢を飲み込み咀嚼する。 「ば、馬鹿な……ひぃっ!?」 集中力の散漫。 己の術が喰われたことに動揺したことで障壁の維持に失敗、隔てるものが消えたことで聖職者の眼球や毛穴などから瘴気が流れ込む。 「おげ、げ、ごぼぇぇぇ!だず、げ、で、勇、じゃ……ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
/181ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8321人が本棚に入れています
本棚に追加