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「う、うわぁぁぁぁくるなぁぁぁぁぁぁ!!」
ずっと勇者と呼ばれた少年を護っていた聖職者、だが助けを求め差し伸べた手は拒絶と忌避によって弾かれた。
絶望の表情で立ち尽くす聖職者、その口から紫色の泡が出たかと思うとそのまま仰向けに倒れた。
「く、くそっ!僕は勇者なんだ!来い!聖剣よ!!」
そんなものはこの場所には存在しない。
「なんでだよ!早く来いよ!早く!早く!早く!!」
駄々っ子のように騒ぐ少年に興味をなくしたのか遭遇者は『新鮮な食材』である聖職者を引きずり、手の指先からかじり始めた。
「く、くそっ!人の皮を被った化け物め!!」
仲間の死体が食われていること、よりも自分の思い通りにならないことに癇癪を起こす少年、遭遇者は何を言っているのか分からないといった様子で首を傾げつつ二の腕を噛み砕き始めた。
「死ねぇぇぇぇぇ!!」
その態度に激昂した少年がそれなりに上質な剣を遭遇者に振り下ろす。
だが、
「ミラ、この状況どんな風に見える?」
「幼い女の子に斬りかかる変態の図ね。」
「じゃあとりあえず変態を殺しておくか、丁度これも試してみたいし。」
少年の知らない二つの声が響いたと同時に何かが少年の体を斬り抜きすっぱりと、斜め掛けに少年の体が分離した。
「ふへぇ……?」
痛みはない、何故なら痛覚が反応する前に瘴気が傷口に殺到し端から腐蝕させているからだ。
「なんで、視点、下、ぼく、ゆう、シャ……」
ごしゃっ!!
道端のゴミでも蹴り飛ばすかのように無造作な蹴りが少年の首を蹴り飛ばした。
「ゴミ掃除完了、と。」
「へぇー、ほうほう、これは興味深い……」
冷めた目で人間だったものを見ているムノの後ろでは聖職者の肩をむしゃむしゃと食い千切る遭遇者をまじまじと見つめるミラ。
「一体『その子』は『何』だ?」
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