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自分のことについて話しているのだと気づいたのか遭遇者がムノとミラを交互に見る。
「『この子』は恐らく人の皮を被った『なにか』が一番分かりやすい例えでしょうね。」
ミラは遭遇者……幼い少女の姿をしたそれの頭を撫でながら話し始めた。
「恐らくこの子の素体となった人間の亡骸に瘴気が詰め込まれ、ゆがんだ形で蘇生したのね。
でも素体が破損していたせいで中に詰められた瘴気が抜けてしまうからこうやって瘴気を外的に補給する必要があるのね。」
ミラが少女の顔半分を覆う髪の毛をどけると、そこには本来あるべき目や肌のパーツがなく、まるで中身のない陶器の人形を砕いたかのように不自然な欠損があった。
そしてそこからはドス黒い瘴気が絶えず漏れ出している。
「どうするミラ?『サンプル』としてはこれ以上ないと思うが?」
あからさまな態度でムノが問いかけると、ミラもまた微笑みながら
「まさか、この子は娘として育てましょう?」
二人が最も憎むは理不尽な迫害や、罪なき者への不幸。
どう考えても口減らしのためにここへ捨てられたこの少女を見捨てる理由など二人には無かった。
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