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瘴気の詰まった屍の少女を拾ってから一ヶ月、二人は彼女を『シゴ(死後)』と名付けた。
「ご飯の時間よ『レゴ』。」
レゴとはキマイラの名だ。結局決め兼ねていたところをシゴが名を書かれた紙を全て食べてしまい、残ったのがそれだったのだ。
「ほら、シゴも。」
ミラはボロから小綺麗なシャツとスカートに着替えさせたシゴに食事を運ぶ。
シゴは最初、ユグドラシル内の壁すら食べようとするほどに見境がなかったが、ムノの阻止とミラの教育、そして幽獄騎士の苦労でなんとか食べてはいけないものと道具の使い方、そしてわずかばかりの言葉を覚えさせることに成功した。最もその覚えた言葉というのは……
「あくぎゃく。」
「あら、もっと欲しいの?」
「ひどー」
「そう、じゃあよそってくるわね。」
「あくぎゃくひどー!」
二人とも反省はしている。それも個性と割り切ったが。
「あらムノ、何を読んでいるの?」
「ん?地上にいた新聞配達員の鞄から一つ拝借してきた。」
ただし地上ではこの日、新聞が届くことはないだろう。
「何か面白いこと書いてある?」
「くくく、シゴにやられてた奴らいたろ?」
「ええ。」
「あいつら結構有名な貴族の嫡男が勇者のパーティーだったみたいでさ、消息不明になったって記事が一面なんだよ。」
「まぁ!」
お互いにくすくすと笑い合うムノとミラ。
「なんでも聖剣を探す旅に出ていたらしいが……聖剣を持たない勇者って勇者と呼んでいいのか?」
「見てムノ、ここにすごく小さく(候補)って書いてあるわ!」
他の文字と比べて限りなく目立たないようにあったその文字を見つけて二人はひとしきり笑終わると、次の記事に目を移した。
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