天下の些事

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「えーと何々?【冒険者ギルド『ドラゴンクエイク』、ダンジョン攻略!】……へぇ。」 あながち自分と関係ないわけでもない話に目を惹かれるムノ。 「【四日前、ダンジョン『牙蠱の巣窟』に突入したドラゴンクエイク精鋭32名は一人たりとも失うことなくダンジョンから生還した。彼らは牙蠱の巣窟の主の牙や宝石を持ち帰った。今や順風満帆天下無双の彼らの次に狙うダンジョンはどこなのか、我々は引き続き彼らを追って行きたい。】……ふふ、私達には関係のない話ね。」 「あぁ、そうだな。」 天をゆく彼らにとって天下でいくら無双してようが関係のないこと、今の時代に空を飛ぶ技術はないため、彼らはそのギルドとやらを恐れることも気に留めることもない。 「まぁ地上ダンジョンの奴らは頑張れとしかコメントしようがないな。」 「そうね。あ、シゴ!ちゃんとフォークを使いなさい!もうこんなに口元を汚しちゃって……タオルは食べちゃダメ!」 「ひどー!」 「ははは」 「お願いします無敵艦隊艦長!どうか助っ人として我がダンジョンと一時的な同盟を組んではいただけないでしょうか!!」 「はは、は……」 魔界にて、自分よりも巨大な竜に平伏され、ムノはユグドラシル内で団欒としていた時とは違う乾いた笑みを浮かべることとなった。 事のあらましはこうだ。 魔界に買い物に来ていたムノはショーウィンドウに並んだモンスターの見本を見ていると、自分の二つ名を叫びながら此方へ突撃する竜に遭遇した。これを自分を襲う敵と認識したムノはカウンターを食らわせようと拳を大きく振りかぶった。 が、その竜は激突することなく、直前で首を垂れ、羽を畳み手足を揃えてムノに平伏し、先ほどの台詞を叫んだのだった。 「あー……うん、話は聞こう。」
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