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「………妙、だな。」
一層も終盤、あまりにも簡単にここまで来たドラゴンクエイクの隊長がそう呟いた。
「そうですね、静か過ぎる。」
隣で構えていた弓を降ろした副隊長の細身な青年も隊長に同意する。
「このダンジョンは先遣隊に四層まで攻略されたんだ、もう少し警備が厳重になってるはずだ。」
「ええ、仮に戦力を集中させているとしても我々を深部にまで入れる理由が分からない……」
考えられる可能性は罠。
「先遣隊!偵察を頼む!もしかしたら罠が追加されてるかもしれねぇ。」
「おう!」
「行ってくる。なに、すぐに調べてきてやるよ。」
先遣隊の二人が偵察のために走り出した瞬間、
「轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟!!!!!!!!!」
地面が消えた。
ムノは目の前の光景に絶句していた。
「いや、確かに殲滅命令は出したが………」
軽く火傷した己の皮膚を修復しながらも眼前の緋月明王を見る。
先程、殲滅命令が下された緋月明王は少し歩くと真上を睨んで口を開いた。
ただ口を開けたのではなく、耳元まで引き下げるように開いた口から大出力のレーザーを放ったのだ。
レーザーは床をぶち抜きドラゴンクエイクの後方部隊を消滅させると、一階層の天井をもぶち抜いて大穴を穿った。
「出力おかしいだろこれ……だが、素晴らしい!!」
緋月明王は開いた口腔を閉じると背中から機械の主翼を展開、一階層へと飛翔して行った。
さらに、階段から登っていた他のゴーレム達も一階層へと到着、【後処理】を開始した。
「すまんな、床と壁は後でビー共に修復させとく。」
ドラゴンクエイクの隊長が見たのは溶けた仲間達と現在進行形で千切り潰されている仲間達だった。
「な、に……が……」
「嫌だぁぁぁぁぁ!助けっ!助けてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
耳が聞き取った声の方を見てみれば、己の忠実な右腕である副隊長が金属の人形が腕から出す光の剣に内臓をかき混ぜられていた。
その光景で朦朧とした意識が現実に戻った。
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