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「て、てめぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
仲間を弄ぶ無機質なそれに激昂した隊長は、堅牢な甲殻を持つ魔物すら斬り伏せた名剣を引き抜き、副隊長の命を弄ぶそれを叩き伏せる。
ことは無く。
「え………」
身体が、動かない。
それどころか、身体の感覚がない。
さっきから耳に響く音はなんだ?
それはまるで、蟲の捕食する音を大きくしたかのような………
「………………ぁえ?」
己の身体を確かめれば、あるべきものが、無い。
ガジガジグチグヂュガジボキプチュプチガジガジガジ……
金属の蜂が、自分の身体を、端から、食って……
「へ……………ひ、」
悲鳴を上げる間も無く、隊長は頭部を何かに咥えられ、宙に投げ飛ばされる。
その時になって、ドラゴンクエイクの隊長は、自分の身体が既に胴体の上半分と、頭しか残ってないことに気づいた。
「う、うぁ」
バクン!!
言葉ですらない声を最後の遺言とし、ドラゴンクエイク隊長はマザービーの口腔に消え、なんの生物か判別不能なレベルに砕かれ……
ピピピ、ビーッ、ガシャッ
『子機製造素材として不適格』と判断され、マザービーの腹から外へ廃棄された。
数分後、統率機体として軍団の行動決定権を持つ緋月明王の『任務完了判断』により、ゴーレム達が撤退する。
残ったのは、食い荒らされた食いカス、掻き混ぜられ焦げついたゴミ、そして熟れて地に落ち潰れた果物のようになったシミだけだった。
「……よし、全滅を確認っと。」
害虫駆除を終わらせたムノはゴーレム達を帰投させ、自分はこの迷宮の主の元へと向かう。
「終わったぞ。」
「うわぁ……」
どうやらダンジョンマスターの権限によるダンジョン内の様子を見ることのできる板で一部始終を見ていたグラキスタは、二階層に広がる惨状にドン引きしていた。
「う、噂に違わぬお強さで……」
「あー、お世辞は良い。報酬を貰おうか。」
「こ、こちらにっ!」
ドラゴンなのだから、もう少しどっしりと構えてもらいたいものだが、短い付き合いとは言えグラキスタの性格は察せられるのでおそらく無理だろう。
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