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「まぁ、今度からはもう少し複雑にするなり、モンスターを増やすなりしろよな。」
「は、はい!この度は、本当にあり」
長くなりそうだったので、報酬を持ってさっさと帰るのだった。
「これが?」
「ああ、これなら大丈夫……らしい。」
ユグドラシルに帰投したムノを出迎えたミラは、ムノが持ってきたそれを不思議そうにつつく。
それは、美しい光沢を放つ人間の頭大の紫水晶に根を張り、その輝きを吸い上げたかのような美しい桃色の大輪を咲かせていた。
「……意外と硬いんだなこれ。」
ムノは、六つの花弁の内一つを抜くと、その意外な硬さに驚きつつもサイズを合わせ、適切な処理を施して行く。
「ダンジョンコアから色々調べてたんだけどさ、なんか最近魔界の情報を閲覧できるようになったらしくてさ、調べてたらこれにたどり着いたんだ。」
その内容は、「魔力漏れの治療法」。
本来は幽獄騎士などの実体あるものに実体の無いものが取り憑いたものが、己を構築する魔力が漏れ出した際に行う方法だそうで、瘴気と魔力は違うとはいえ症状は似ているのだから試してみようと思ったのが発端だ。
「冒涜の花は魔力を逃さないために、高い密閉性を持つとかなんとかでなー、傷口に貼り付けると魔力漏れを止めてくれるそうだ。」
シゴの顔に合わせたサイズに切り、断面を軽く焼いた花弁をシゴの顔に貼り付ける。
突然顔に貼られた異物にくすぐったげにしているシゴだが、その顔から常に漏れていた瘴気はぴたりと止まった。
「お、上手く出来たみたいだ。」
「凄いわムノ!……でも意地悪だわ。」
「なんで?」
そう問いかけると、ミラは不機嫌そうに頬を膨らませると……
「私だって、その魔界にある情報を見たいんですもの。」
その夜ベッドの上での話し合いの結果、ムノと一緒になら魔界の情報を見ても良いということになった。
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