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と、丁度岩肌に足を引っ掛けられそうな亀裂を見つけた。
「ここ、に、足を……。」
足場を確保し、片手で木の枝を掴む事で右腕を自由にする事に成功する。
「だから?」
どうにもならない。
道具もなければ魔法を使えるわけでもない、どうしろというのか。
「くそっ!」
仕方がないのでまずは木の上に立つことにする。
途中何度か手を滑らせて死を覚悟しながらも一時間、なんとか木の上に上がることができた。
「はぁっ!はぁっ!」
一ヶ月は牢に囚われていたので身体能力が低下していることを自覚したムノは荒い息を吐く。
「げほっ!げほっ!……はぁ、ここからどうするか……ん?」
ムノは枝の先に何か光るものを見た。
正直先端は自分の体重を支えるにはあまりにも頼りないが、それでも光るものが何か気になるという好奇心がムノの中に生まれていた。
「ゆっくり……手を伸ばして……」
みしっ。
「!!!!」
停止するムノ、その額には玉のような汗。
「も、ど、れ。」
ゆっくりとムノは元いた幹の方へと戻って……
ばきっ。
神様のバカヤロー。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!?!?!!?!?!!!?!?」
丁度ムノの足のあたりからポッキリと折れた木は、真っ逆さまに落ちて行く。
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