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自分が座っている場所が土でもない、そう騎士や剣士の持つ剣のように鍛え上げられた鋼の上に乗っていることに気づいたムノ。
「こんなのが自然発生するわけない……よな。」
だとすると考えられるのは……
「古代遺産(オーパーツ)……。」
古代遺産(オーパーツ)。
それは遥か昔、ムノが生まれるどころかムノの曽祖父よりも更に前の時代に栄華を誇ったとされる文明の道具。
その文明はある時を境にぱったりと消えてしまったが、地下から稀に古代文明の道具が発掘されるのだ。
有名なのでは百年ほど前に闇の化生である魔王を倒した勇者の仲間の一人が【2丁拳銃】なる古代遺産を持っていたとされ、勇者自身の光熱の刃を持つ聖剣も古代遺産だったという。
だが見つかるのは精々人が持てるような道具ばかり。
ムノが今乗っかっているような巨大なものなど歴史上存在しないだろう。
つまりムノは歴史に残る大発見をしたわけだが歴史に残るどころか地上では既に社会的に抹殺されているのでそれは叶わないだろう。
「仮にこれが古代遺産だったとして……何なんだこれは?」
推理タイム。
「ここまでデカイなら乗り物とか住居と考えるべきか。」
谷底には太陽も月の光も届かないが、光を放つ苔の魔物ヒカリゴケ(無害、食べると美味しい)がいるので何とか薄ぼんやりとだが周りを見ることができた。
「爺さんの図鑑を読み漁ってて良かった……じゃなきゃ飢え死にするとこだった。」
岩肌に生えるヒカリゴケを毟ってもっしゃもっしゃ食べながらとりあえず歩いて見ることにする。
ゴトッ
「あぁ、そういえば。」
足元の硬い箱に気づかず裸足で蹴り飛ばしたことで涙目になりつつも箱の存在に気づくムノ。
死にかけながらもゲットしたのだ、安息できる場所を見つけたら開けることにして箱を持ち上げる。
「意外と軽いな。」
箱をお供に散策すること一時間。
「長いなこれ、端から端までが見えない。」
ムノは鋼の塊の端に立っていた。
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