捨てられて落ちて

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気づいた事は、一方の端は槍の穂先のように鋭く尖っており、もう一方の端は小さな筒を幾つも束ねたようになっている、という事。 そして丁度真ん中の辺りに硝子の板が張られていて、どうやら中に空間がある事。 全体的に巨大な鉛筆のようなこの鋼の塊の左右にはまたも巨大な何かがくっついている事。 そして遠目に見えたがこれよりも小さいが十分巨大な鋼の塊が沢山この谷底にはあるという事。 「空間があるなら入り口もあるはずだ。」 誰ともなしに呟くと、入り口を探し始めるムノ。 二時間後。 「入り口どこだよ!!」 二時間探して見つからず、ヒカリゴケをやけ食いしながらキレるムノ。 「本当にただの鋼の塊でしたなんて俺は認めないぞ。」 確かに透明な硝子の向こうには空間が広がっているというのに、中に入れないという歯痒さ。 季節は春といえ、谷底。 寒さが確実に薄っぺらい囚人服のムノの体温を奪っていた。 「さ、さむい……。」 光と同時に僅かに熱も放つヒカリゴケの生える岩壁に張り付きながら震えるムノ。 「あぁああ!!このデカ鉛筆!【中に入れろ】!!」 ……… …… … 【旗艦ユグドラシル起動。】 【随伴艦、アースガルズ、アルフヘイム、スヴァルトアルフヘイム、ヨツンヘイム、ムスペルヘイム、ニブルヘイム起動、ユグドラシルとのリンク確認。】 【音声認証、データ確認。】 【データ破損、音声の人物を暫定艦長に設定。】 【ユグドラシル内部に転移。】 次の瞬間、ムノの姿は忽然と消えていた。
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