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「綺麗なお嬢さん、お茶でも如何ですか?」
「おねーちゃん!僕と遊ぼう!」
「俺様と祭りを巡る事を許してやってもいいんだぜ?」
「いっしょに遊ぼうぜ!」
「美しい僕には君こそが相応しい。」
嗚呼、鬱陶しい。
この有象無象共は私が魔女だと知ったらどうするだろうか。
(こんな時はムノだけを見ましょう。)
後ろ姿しか見えない愛しい夫の姿をじっと見る。
今は見えないが前髪で少し隠れた眼差しはいつだって自分を優しく見つめてくれる。
無造作に握られた手はミラの身体を優しく愛撫してくれる。
引き締まった身体は抱きしめると暖かな温もりで包んでくれる。
(貴方は私の事を自分には勿体無いって言ってくれたけど……それはむしろ私の方だわ。)
ほう、と溜息をつきながら熱い視線をムノに送り続けるミラ。
もう既に周りの有象無象など記憶の片隅にすら存在しなかった。
それに気づかぬ哀れな道化達は自分こそ彼女の寵愛を受けるのだと醜く争う。
彼等が頬杖をついたミラの左薬指に指輪があるのに気づいてすごすごと退散したのは実に二時間後のことだった。
司会の男の筋肉トークは実に一時間続き、ようやく予選が始まる。
ルールは簡単で、参加者を二チームに分けて綱引きをし、勝ったチームが次の本戦に進めるようだ。
ムノはBチームだった。
「そぉれでわぁぁぁあ!!はぁじめぇぇぇ!!」
司会の男が開始の声を叫んだ。
と、同時にムノの手に握られた綱がピンと張られる。
(本気だしたら駄目だし負けそうになったら引っ張ればいいか。)
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