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準決勝。
ムノの対戦相手は筋骨隆々なご老人。
「若造などにはまだまだ負けんわい!
うー!はー!」
ゴキィッ!!
「はぐぁ!!?」
ご老人がぎっくり腰により何とも言えない空気のまま決勝進出。
「次を勝てば優勝ね、ムノ。」
「さっきの人は中々強そうだったのに……人間、老いには勝てないか。」
「あら、私達の事を皮肉ってるならキスしてあげるわよ?」
「そのつもりだが?」
ミラは大衆の視線が集まる中、ムノに深く、熱いキスをした。
ムノは男達からは嫉妬と羨望の、女達からは尊敬と羨望の眼差しを送られているのを感じながらも、ミラを拒むような事はしない。
「ぷあっ……随分と情熱的だなミラ。」
「うふ、お祭りが私の気持ちを高ぶらせてるのよ。」
と、
「お取り込み中だがいいか?」
二人に話しかける者が。
ムノが声の主の方を向くと、そこにはムノ達と同世代の青年がムノをじっと見ていた。
「何の用だ?」
「俺の名はレオ、レオ=ハーグ。
次の決勝でお前と戦う者だ。」
驚いた事に、この筋肉質とは無縁そうな青年がムノの対戦相手だというのだ。
まぁムノも人の事は言えないのだが。
「で、そのレオさんが私の夫に何の用かしら?」
「単刀直入に言う、次の試合を棄権しろ。」
「「はぁ?」」
二人は最初あっけに取られていたが、
「貴方、それは八百長をしろという事かしら?」
ミラが敵意の眼差しでレオを睨む。
だがレオから返って来た言葉は卑怯者とは程遠い台詞だった。
「違う、俺は今回の景品を何としてでも手に入れなくてはならない。
故にもしも戦うというのなら殺してでも勝つ、勝つためなら何でもする。
だから無用な血を流したくないからここに来たのだ。
決勝までに考えておいてくれ。」
レオはそう言うと、すたすたと歩き去って行った。
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