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「そうか、二人はこの国の人間じゃなかったな。」
そもそもこの国の、どころか種族として人間じゃないがな、という言葉を心の中へ留めつつもレオの話を聞く。
「オイスト・ファミリーはこの国の民なら大公軍と同じくらい憧れる組織なんだ。
この国が建国された時からあって自警団としてこの国を内側から守ってくれる。
この国でテロが起きた時も大公軍と協力してテロリストを捕らえたんだ!それに……」
まさにヒーローに憧れる少年、といったレオの様子を何処か羨むような、遠い目で見つめるムノ。
嬉しそうに話しかけるティナを見るミラも同じような目をしていた。
多分ムノと同じことを考えているのだろう。
どれだけ冤罪を許さないと語っても、どれだけ悪を不愉快と言っても。
ムノは無間の谷に落とされたその時から、ミラは磔にされた時から【正義】を捨てた。
そして故国を、無辜の民を虐殺した時から二人はどうあがいても【悪】なのだ。
だから二人にとってレオ、ティナ兄妹はこの上なく眩しい。
不愉快だから相手にどんな事情があろうと殺す、そんな価値観が刻み込まれているムノとミラは彼等兄妹とは絶対に分かり合う事は出来ないだろう。
「……ということなんだ。」
どうやらレオのトークが終わったらしい。
ムノは空返事を返しながら思う。
だからなんだ、自分とミラは【殺された】者達だ。
それにムノもミラも最早人ならざる者だ、どう振舞おうとこちらの勝手。
悪のダンジョンマスターと魔女同士、勝手気儘に生きればいいじゃないか。
「ムノ。」
ミラが微笑を称えてムノを見つめる。
同じく人ならざる者だからか、それとも舌に刻まれた【一心同体】の魔術で繋がっているからか、
「私は貴方がどんな畜生になってもついて行くわ。」
ミラもムノと同じことを考えていたのか、そう言った。
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